2008年9月22日月曜日

基本ビジネス、ウイングチップ


 地元の高校を卒業して、傘貼り生活(浪人生活)を経た後に地方の国立大学工学部、大学院の修士課程を卒業して就職した。
 就職して最初のボーナスで買ったのは靴だった。女性が男性のスタイリングを見る時に最初に見るのは靴だという。詳しくは後述するが、様々な女性が異口同音にそのことを言っている。別にそういう女性の意見を意識したわけではない。ただ単に足元をすっきりとするのがおしゃれの第一歩ではないかと考えていた。
 私には以前から欲しかった靴があった。REGALのウイングチップで色は黒だった。ウイングチップの語源は足の甲の部分に開けられた穴と凸状の飾りのラインがその名前が示すように鳥の翼のようになっているから。とても重厚な感じで威厳を持つ印象を与える。ビジネスシーンには打ってつけのものだ。スリップオン(ローファー)などはそれほど高くもないし、ビジネスだけではなく様々シーンで使うことが出来るのでコストパフォーマンスが高い。が、ウイングチップと言えば当時の私の給料では高過ぎてなかなか買うことが出来なかった。
 勿論、アウトレットもなければ、ネットで買うなんてことも出来ない時代だ。当時は色々な場所にREGALの直営店があった。就職してから、私は吉祥寺に住んでいた。吉祥寺にはREGALの直営店があった。毎週、週末になったらウィンドウショッピングをするのが楽しみだった。いつも、その店へ行っては、「ボーナスが出たら買うぞ、ボーナスが出たら買うぞ」と念じながら見ていたものだった。
 冬のボーナスが出た時に迷わず目指していた黒のウイングチップとシューキーパーを買った。REGALと書かれた手提げの紙袋をアパートに持ち帰り、買った靴を何度も眺めた。とにかく憧れていた靴を手に入れることが出来た。そのことが嬉しくて仕方がなかったのだ。

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